大阪会報誌 2021年4月号に、塾長の文章が掲載されました。

2021年4月号の大阪医師会報に掲載された当校塾長の伊知地が寄稿した文章をご紹介いたします。

学校で起こる「いじめ」への対応

70歳を超え、教育の重要さを痛感するようになった。日本の教育の現状に多々不満を感じると同時に、自分がこの世に生きてきたことの意味を確信したいという、ある種の焦燥感から生じる思いかもわからない。その中でも、「いじめ」に対処する学校の在り方にはもどかしさを感じずにはいられない。あれ程大きな非難を受けながら、全く対処できていない実態だけが目立っている。教育の実践の本山である学校で、教育が全く機能していないのである。

塾長 伊知地 暁

人は誰しも外の社会に出る。そして必ずある組織に所属しなければならない。そこで多くの人は「自分の居場所」を獲得し、適応し、安住する。しかし、「自分の居場所」を作れない人が少なからずいる。その人達はその組織で孤立する。そこに「いじめ」が発生することもある。そして「自死」といった悲劇的な結果に至ったとき、社会や学校は漸く立ち上がる。しかし、それでは遅いのである。「いじめ」を出した学校は社会的に非難される。いくら学校を非難しても、現状では「いじめ」は繰り返されている。学校が立ち上がるべきなのは、「いじめ」が発生する前、生徒が教室の中で孤立し、「居場所」を見つけようと焦っている時なのではないだろうか。「居場所」がなく、孤立している生徒は既に「いじめ」の被害者であるか、その予備軍である可能性が高い。学校は、悲劇的な結果に陥る前に、既に対処しておく必要がある。いじめが起こる理由を突き止めていけば、事前に対処する方法は見つかる。その方法を社会全体で、また文部科学省が率先して学校教育の問題として考えていく必要があると思う。

私の予備校で「いじめ」が原因と見られる騒動があった。事の顚末はこうである。「経済的な理由で是非特待生として学ばせてほしい」という青年がいた。「国立大学医学部には必ず受かります。」と自信たっぷりに断言しながら、その実、自信の無さを顔中に宿していた。学力もそれ程のものではなかった。何よりも既に25才になっていた。迷いはあったが、話し合った末に特待生として入塾を認めた。ところが、その数か月後、彼を巡って大変な事件が起こってしまったのである。彼は孤独を身にまとい、いつも一人で行動していた。入塾後、数か月経っても未だ「居場所」を見つけることは出来ないでいた。他人から見ると少し奇妙な行動をする青年に見えたのだろう。同じ教室で勉強する仲間の中に、彼を白い目で見、裏で彼の立ち振る舞いを真似しながら、彼のことを揶揄する者が出てきた。まさに「いじめ」の対象にされたのである。私はそうしたグルーブがいることを知り、彼の困惑や不安を察知していながら、多忙を理由に全く対処しないでいた。時間が経てば何とかなるだろう位に考えていた。これが私の不手際だった。ある朝、彼は思い余って突如暴挙に出てしまったのである。聞くところによると、前日の夜彼を白い眼で見ていた連中が、既に彼が帰っていると思い(実際にはまだ帰らずにいた)、彼の日頃の立ち振る舞いを大声で真似しながら笑いものにしていた。それを自分の耳で聞き、目で見た彼はショックを受けたまま帰宅した。一晩中眠ることも出来ない程怒りに震え、朝塾に来るや否や、自分のことを揶揄していた連中に殴りかかっていったのである。その時は私の同僚が必死でその暴挙を止めたため、大事までには至らずに済んだ。

その後は大変だった。相方共に相応の処置をする必要があった。人の心を傷つけた連中にも相当に憤りを感じた。しかし暴力を振った人間も許すことは出来なかった。前者には厳しい叱責を与えた。後者(暴力を振った人間)には塾の教室への入室を禁止し、教室外で個別授業を実施することにした。しでかした行為からすれば退塾が当然のところ、どうしても彼の悔しさ、無念さを思うと退塾には出来なかった。その個別の授業の際に、彼の将来に対する不安を解消し、前へ進む力を与えるために「30才になるのを待ちなさい。その頃になれば今の君の自信のなさ、他人に対する強い緊張感も大分楽になってるやろ。」とアドバイスした。後日彼はこの言葉で救われたと言ってくれた。騒動の後、1週間に3回各々2,3時間ばかり、教室外で授業を行い、多くの話をした。彼は今、滋賀医科大学に通っている。あの当時の思い余ったような目の鋭さもなくなり、表情も柔らかくなった。「先生が言った通りになってきた」とよく言ってくれている。

ここに書き記された経験は新聞紙上で目にする「いじめ」とは比べものにならない程、軽微なものだ。学校で起こる「いじめ」は思慮分別のつかない年齢の子供たちの間で起こるために厄介なことが多い。「いじめ」を断ち切るために、「いじめ」を早期に発見し、DVや児童虐待などと同様に被害者をいち早く保護する方法を何故考えないのだろうか。被害者の「いじめ」られる日々の苦痛、苦悩を思うとやり切れないものがある。

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